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『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』レビュー

スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』

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公開日2019年6月28日(金)

鑑賞日2019年6月30日(日)

バージョン 2D字幕

 

 あの最高にして感動のシリーズ最終章『アベンジャーズ/エンドゲーム』(以下EG)から二カ月。フェイズ3及びインフィニテイーサーガの最後の作品は、エンドゲームかと思いきや今作FFHだと、マーベルスタジオのケビンファイギ社長から公式に発表済み。EGを観る前は「これを観てしまうとアベンジャーズ(MCU)ロスになる」と思っていたけど、何週間か前に公開されたFFH最終予告編(EGネタバレ込み)を観たら、そんなことは無い!確かに一つの時代が終わったけれども、まだまだシリーズの未来に希望を感じた。全然エンドゲームしねーじゃん笑

 

そんな今作FFHも公開からまだ三日しか経っていないのにツイッターでは絶賛の嵐。まあ、その辺は毎度のことだけど、EG並みに(下手するとそれ以上に)ネタバレ無しでは何も語れないようなツイートの多くに、一時間でも早く観に行かなければと土曜の仕事終わりに深夜25時の回を予約(普通の時間はほとんど埋まっていた)。

その後が私の失敗。仕事から帰って支度をして、終電前まで仮眠を取ろうと思ったら、起きたのが午前3時。「終わってるやん!」と1900円を無駄にした事を悔みつつも、とにかく早く観なければと朝8時の回をすぐ予約。そして鑑賞終了後のレビュー作成の現在に至る。

 

 いや本当に面白かった。「スパイダーマン」として「MCU作品」として「ヒーロー映画」として「青春映画」として、最高に面白だった。そして毎度ながら今回も衝撃の展開だった。

 

以下ネタバレあり

(『アベンジャーズ/エンドゲーム』の重大なネタバレも含みます )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚構の存在

今作で何よりも衝撃だったのは、後半のミステリオの正体だろう。予告編及び本編前半ではヒーローとして描かれていたけど、公開前から「本当に味方なのか怪しい」と言われていた。実際の結末としてはヴィランだったわけだけど、その描かれ方は完全に予想外だった。

エレメンタルズという怪物の存在も、別の次元から来たという事も、そもそもべック(ミステリオ)がスーパーヒーロー(超人)だという事も嘘だった。最先端の科学技術で作り上げた(偽物の)ヒーローになる事で世界を支配しようとするというのが面白い。シリーズエンタメ作品としてかなりのクオリティで作られ世界を拡大してきたMCU、この高精度なフィクションの中で作品自らが「これはフィクションです!」と言っているようで、それが逆にリアルだった。

 

 

善人は悪人に利用されやすい

 前作『ホームカミング』では「能力(スーツ)があるだけではヒーローになれない」という事を描かれていたけど、今作で感じたのは「純粋さや良心だけでは、その人が持つ能力を悪人に利用されることがある」ということ。「味方(善人)のフリをした敵に利用される」という展開だけ聞けば良くある話だが、「純粋なだけで社会経験の乏しいピーター」が「社会経験豊富な悪い大人のべック」に騙される事でその要素が際立つ。

 

沢山の情報にあふれる今のネット時代、真偽に問わず感情にダイレクトに流れてくるニュースも多い。この現実社会も大半の人は善良な市民かもしれないが、流れてくる情報や近づいてくる善人(のフリをした人)を何でもそのまま信じていると、賢くて悪い大人にすぐ利用されてしまうかもしれない。エンドクレジットでのスクラル人フューリーの衝撃に次ぐフューリーバカンスがスタジオである点は、まさに観客に対して「お前が観ているのは真実か?騙されていないか?」そう語りかけているように思えた。そういう視点で観ると、今作は政府の嘘を描いた『キャプテンアメリカ/ウィンターソルジャー』の続編のようでもあり、ヴィラン(スクラル人)が実は弱者だった『キャプテンマーベル』の続編でもある。MCUにおけるフューリーの役割って、そういうMCUの中の嘘を暴くことにあるのかもしれない。

 

 

アイアンマン(トニースターク)という存在

MCU版のスパイダーマンを語る上で絶対に欠かせない存在がアイアンマン(トニースターク)だろう。『シビルウォー』で憧れの人という立場からピーターをヒーローに勧誘し、『ホームカミング』では「ヒーローであることの重み」を厳しく説き突き放すも最後には認め、『インフィニティウォー』では正式にアベンジャーズ入りを認めるもサノスへの敗北で死別、『エンドゲーム』では感動の再会を果たすが立場を変えての死別。アイアンマン(トニー)がいたからこそスパイダーマン(ピーター)は存在し得る。そういう意味では今作は(というかMCUの『スパイダーマン』は)、トニースタークが登場してなくとも『アイアンマン』シリーズの続編とも言える。「偉大な師を失った世界をどう歩んでいくか」それが一番の見所だった。

『ホームカミング』であれだけ認めてもらいたがっていた少年は、認められた後を描く今作では、その期待と責任の重さに押しつぶされそうになる。一度はその重責から逃げようとするが、ミステリオという新たなヒーローの師と出会い、決意新たに世界の脅威(エレメンタルズ)に立ち向かう。がしかしそのミステリオこそが真の黒幕であり、その経緯もトニーの過去のから生まれたという点が『アイアンマン』らしい。一度敗北し機内でハッピーと会話するシーンは、シリーズを観てきた人なら涙せずにはいられない。亡き師トニーに認めてもらったにもかかわらず、己の甘さから唯一の形見を悪人の手に渡してしまい、友人と世界を危険にさらしてしまう。ピーターはそこで初めて、他人の期待や受け売りなんかではなく、自らの意思で行動する。そこで流れるロック(曲名がわからない・・・)は、トニーがアイアンマンスーツを開発中にいつも流れていた曲。本来盛り上がりの曲であるはずなのに、エンドゲームでトニーの死を観た直後だからこそ号泣してしまった。

今作がフェーズ3の締めくくりであるというのは、そういう部分が大きいのかもしれない。

 

 

青春モノ

 最後になってしまったけど、今作で忘れちゃいけない大事な要素が「青春モノ」であること。修学旅行を軸にピュアな高校生の恋を描いている。不器用な男子高生ピーターと不器用な女子高生MJの絶妙な塩梅の交流が観ていて楽しい。いろいろ策を練るけど空回る感じや恋敵に勘違いされる感じなんかもおもしろかった。最後のキスも初めてで慣れてないです感がたまらなく良い。ハッピー&メイ伯母さんやネッド&ベティの関係も観ていて楽しかった。

 

まとめ

  最近のマーベル事情(MCUに関わらず)で、三月に『スパイダーマン/スパイダーバース』があったこと、『エンドゲーム』で時間軸の分岐(別次元の存在)が描かれたこと、X-MENのMCU統合が正式に決まったこともあり、そんな中での今作予告編では別次元の存在を語っていた。だから今回私は、トビーマグアイア&アンドリューガーフィールドの登場がサプライズであると、ひそかに考えていた。今回は残念ながら叶わなかったけど、トムホランドもアンドリューもそれには肯定的なコメントをしていたし、ファイギ社長も可能性の否定はしていない。このMCUブームがそのまま上り調子で続いてくれれば、いずれフェイズ4~5で、その夢も実現してくれるのではないか。そう願っている。