タマコシ シネマティック ユニバース

主に映画レビュー。その他はどーでもいーこと

映画4作同時レビュー

二ヶ月ぶりの更新。最近、仕事が忙しくて趣味に割く時間がなかなか作れない。絶対に外せない作品だけは、なんとか劇場で観てきたけど、それをレビューする暇は本当に無かった。長期休みに入ったので今年も年間ベスト10作品をまとめたいけど、その前に直近2カ月に観た4作品を一つの記事で同時レビューする。

 

 

 

 

 

 

『IT/イット THE END "それ”が見えたら、終わり。』

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原題(IT Chapter Two)

公開11.1   169分

アメリカ、ホラー

 

二年前に公開された『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』の続編にして完結編。前作では少年編のみで構成されていたのに対し、今作ではオリジナル通り大人編メインで合間合間に少年時代の回想が入る形。前作でもハイレベルなホラー描写だったが、今回はその何倍にも増したホラー描写のオンパレードで169分という長時間でも全く気の休まる暇が無い。

「【恐怖】とは何なのか?」。今作においてそれは、過去のトラウマ・罪悪感・劣等感・コンプレックス・心の弱さetc…。少年時代に抱えていたそれらの【恐怖】は、大人になって忘れていが、心の奥底には残っていて根本的な解決はできていない。そんな忘れていた【己の恐怖】と改めて向き合い克服すること。それこそが今作のテーマであり面白い所だと感じた。

漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の原作者・荒木飛呂彦先生もリスペクトするスティーブンキング原作なので、今作はジョジョ(特に第四部)に通ずる要素やテーマが至る所にある。なので、今作はジョジョラーにこそ観て欲しい作品である。

 

 

 

ターミネーター ニュー・フェイト』

 

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(Terminator:Dark Fate

公開2019 129分

アメリカ、アクション/SF

まず、私が映画好きを自覚するキッカケになった作品のひとつが『ターミネーター2』であり、それ以上に好きなマイベストムービーのひとつが一作目の『ターミネーター』だ。賛否両論湧きあがった今作だが、私は若干のモヤモヤはありつつも概ね満足している。

何よりメインキャラ三人の女性が素晴らしい。28年ぶりのシリーズ復帰を果たしたサラコナー役リンダハミルトンは、一作目で守られ逃げるだけだったのに対して、今作ではむしろ積極的にターミネーターを狩りに行く最高にカッコイイおばあちゃん。グレース役マッケンジーデイヴィスはエロすぎない丁度いい美しさとカッコ良さ。一作目のサラコナーポジションのダニーは、守られるばかりでではなくむしろ積極的に闘いに行く。この三人の活躍する女性キャラクターの関係性や作中での成長は、長期シリーズの最新作として正しい現代風アップデートだと言える。

今作、序盤から衝撃的だったのは、審判の日は回避できた”のに”、スカイネットが数体のターミネーターを過去に送った事は変わらない。そしてその一体にあっさりジョンコナーが殺されてしまっていたこと。この展開により本作が「未来戦争やジョンの物語」ではなく「サラコナーの物語」であることが強調される。そして今回登場するターミネーターREV-9はスカイネットとは無関係に別の人工知能リージョンが支配する未来から来たことが明かされる。結局人間は同じ過ちを繰り返す。

今作唯一のモヤモヤは、T-800についてだ。「殺人目的で作られたターミネーターが実は命の尊さや愛を学ぶこともできる」というのは、確かに二作目で示されたテーマではある。でも、でも、でも・・・ジョンを殺害した個体が任務完了後に自主的に家庭を持って子育てを経験して愛を学んで後悔からサラの味方をする。これは私的には無理があるように感じた。「愛を学んでなんやかんや最後はサラの味方になる」このゴール自体は良いとして、その持って行き方として他に無かったのか?これではシュワちゃんを本作に登場させるために無理やりシナリオに組み込んだように見えてしまう。そこだけが残念でならない。

 

 

 

ゾンビランド:ダブルタップ』

 

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公開11.22  99分

アメリカ、アクション/コメディ/ホラー

 

大好きなゾンビ映画だが久々に新作を鑑賞。10年前の前作、ポップで爽やかな雰囲気はそのままに癖のある個性的なキャラクターは増え、ゾンビもアクションもレベルアップしている。学びも風刺も全然ないけれど、とにかく笑えてスカッとする気持ちのいい作品。

ターミネーター鑑賞直後だったこともあって、「アスタラビスタ ベイビー」が印象に残った。

 

 

ぼくらの7日間戦争

 

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公開12.13  88分

日本、アニメ/青春

高校生版ホームアローンであり、日本版ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー!「それなりに面白そうだな」程度の期待値だったのだけど、観てみると想像以上に面白くて良い作品だった。

リメイク作品だが単純な焼き直しではなく、現代ならではの問題や若者の悩みをガッツリと取り入れられていて感心した。冒頭数十分は想像通りの展開なのだが、タイ人の子マレットが登場してから雰囲気が一変し展開が読めなくなる。ただの「子供VS大人」以上に「社会弱者VS権力者」の構図がリアルで大人が子供を追い詰めるやり方もえげつない。それに対して主人公たちもあらゆる作戦を駆使して大人たちを翻弄するので、どちらが勝つのか最後まで読めない。

中盤の絶望的展開では、主人公たちの結束力が崩壊しかける。だが、そこでの主人公の決心行動がキッカケとなり仲間たちの意識と行動がドミノ式に良い方向に変化して、むしろ絶望展開前よりも仲間同士の絆が強くなる。ここはガーディアンズに近いものを感じた。

 一つマイナス点を挙げるなら、来日たかだか1~2年のマレットがあまりにも日本語ペラペラであるところ。揚げ足取りのような気もしなくもないが、せっかく外国人労働者の人権問題を取り上げるのであれば、そこも片言にするなり突き詰めて欲しかった。

 

 

映画『ジョーカー』 誰もが悪になりうる  

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『ジョーカー』R-15指定 

公開 2019.10.4(金)

鑑賞 2019.10.6(日)

ジャンル ドラマ/スリラー

 

 

 

2013年『ダークナイト ライジング』のラストにおいて、主人公ブルース・ウェイン/バットマンの以下のセリフがある。

『誰もがヒーローになる事ができる。(両親を亡くした)少年の肩にコートをかけて「世界の終わりじゃない」と声を掛けてあげればいいんだ」

ノーラン監督のバットマン三部作のラストが「誰でもヒーローになれる」というテーマだったのに対して、バットマンの宿敵ジョーカーを描いた今作のテーマは「誰もがヴィラン(悪)になりえる。誰もがヴィラン(悪)を生み出している」だったように感じた。

 

 

 

正直、「面白かった」とか「良い作品だった」とか、そういう感想で表現していいものか迷っちゃうんだけど、良くか悪くか確実に価値観に影響を受けた。怖かった、劇薬だ。

1週間前に観てきたけれど、ずっと”後半のあるシーン”が頭から離れない。衝撃の作品だった。

だから、人によってはおススメできない。というか観てほしくない。心が不健康な人、子供は観ないでください。

 

 

 

まず、このタイミングでコレ公開しちゃって大丈夫なのか?ってマジで心配になった。政府や富裕層への不満が蔓延する現代、影響を受けてやらかす人が出てきそう。というか、現実で実際に起こってきた凶悪な単独テロ事件の容疑者って、今作のアーサーみたいな心境なんじゃないかと思う。今年で言えば、京アニ放火事件とか、川崎市登戸通り魔事件とか。

全てではないかもしれないけど、多くの凶悪犯罪は、元々悪い人だから起こすのではない。社会から疎外され、否定され、憎しみを蓄積濃縮した人が、失うものが全て無くなった時に爆発させるものだと、そう感じる。そして世の中には、「ジョーカー」になる一歩手前で踏みとどまっている人が沢山いる。

そういえば荒木飛呂彦先生も言っていた。「弱さを攻撃に変えた人間こそが真に恐ろしい」と。

 

そしてもう一つ、今作の恐ろしい所は、社会への不平不満を持つ大衆がアーサーを持ち上げることでジョーカーが誕生したところ。アーサーをどこか感情移入しちゃ自分、恐ろしい事をしているアーサーを応援しちゃう自分。普段、ヒーローを応援しているくせに「実は自分もあっち(ヴィラン)側なのかもしれないと思わせちゃう。「悪」は突然現れるのではなく、そうなりうる人物に関わる全ての人が、知らず知らずと作り上げていくのだと思う。

 

 

 

 

当然ながら以上は私個人の意見感想だ。今作の面白いのは、観た人で意見がいろいろあって、それを読み比べること。私のように「周囲がアーサーをジョーカーに変えた」と言う人もいれば、「いや彼は元からおかしかった」という人もいる。観る人によっては、彼はヒーローに見えるかもしれない。そういう「悪とは何なのか?」「現実世界におけるジョーカーが生まれる可能性」とか観た人が意見感想をぶつけあう事で、恵まれた環境で生きていると気づきにくい現実の社会問題を可視化すること、いわゆる我々普通の人たちの中に存在する「悪の可能性」に気付かせること。それが今作の、ジョーカー(アーサー)の真の狙いなのかもしれない。

 

 

 

追加

大事なことを書き忘れるところだった。悪人サイドの物語の感想で「こういう悲しい生い立ちだからそうなった」と書くと必ず「だから彼の罪はしょうがない、って許されるの?」って反論が出る。

私はそんなことは言わない。私が言いたいのは「だからしょうがない」ではなく「そうならないように(悪人を作り出さないように)、人にやさしくしよう」ってこと。そんな大きなことじゃなくてもいい、普段の日常での何気ないやさしさが、時として犯罪者になる一歩手前の人の抑止力になるかもしれないってこと。コンビニでのバイト店員に対する「ありがとう」の一言だとか、運転中一時停止して歩行者や右折車への譲りとか。

作中でバスでのお母さんが「この子にかまわないで」ではなく「ありがとう」と言っていたら。アーサーが芸人仲間の小人症の人に対して「君だけは僕にやさしかった」と言って殺さなかったこととか。

「やさしさ」というのも一種の「防犯」なのかもしれない。 

映画『ビフォア・サンライズ/恋人までの距離』

台風の夜、本日の一本。鑑賞終了

 

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なんか…尊い。エモい。

 


そういう旅に憧れる。そういう恋に憧れる。

 

 

列車で偶然出会った男女。お互い惹かれ合うけど、特別にしたいからこそ、その日限りで二度と合わないことを誓う。なんか…なんか…なんか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が感想です。

映画『新聞記者』を観て感じたこと

 

昨日、ずっと気になってた (コレは今観とかないといけないと思ってた)映画を観てきました。
1ヶ月程前に観に行った『天気の子』もむちゃくちゃ良くて感動したんだけど、レビューサボっててごめんなさい (誰に謝ってる?)。今作は全く違うベクトルだけど、コレは早く書いとかないとと思って書いときます。

 

 

『新聞記者』

日本・2019.6.28公開

ドラマ・サスペンス

 

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先に観に行った友人が言っていたように、「気持ち悪い」という感情を抱いた。

 


この映画を観る日本人には2種類の人間がいる。「これはフィクション。こんな異常なこと、現実ではありえない」と感じる人と、「このような恐ろしい事が、実際に現在の日本では平然と行われている。そして、その傾向はどんどん加速している」と感じる人だ。

 


私は後者である。

 


作中で出てくるニュース事件が、ここ数年の現実のニュースと重なる。モリカケ問題、レイプもみ消し、反政権者へのデマによるスキャンダル。全て把握しているわけでは無いが、あまりにも実際のニュースのメタファーが多い。

 


権力と良心との板挟みで自殺した神崎さん。これは官僚の世界に関わらず、一般社会のブラック企業に勤める人たちとも重なる。正直者がバカを見る。一方でロボットのように権力に従い、保身のみのために働き、自らの行いによって傷つく人や命を落とす人がいる事を想像もしない(または見て見ぬ振りする)。

 


偉そうな事を言ったが、明日は我が身だ。僕も「生きたければ、アイツを殺せ」「家族を守りたければ、従え」、そう言われれば泣く泣く手を汚すかもしれない。

 


そんな葛藤に苦しみながら、戦っている人、屈した人が権力者側の中にも眼に見えないだけで沢山いるのかもしれない。そんなことを感じたのが今作最大の学びかもしれない。

 

 

 

話題の今作だけど、今僕が恐れているのは、DVDやBlu-ray発売・動画配信・TV放送ってなった時に、キャストスタッフの不祥事(捏造)やら表現の規制やらなにかと理由をつけて、配信販売の禁止 (自粛)とかになり多くの人が今作を観れなくなってしまうこと。そういう事も十分にあり得ると思いながら、そうならない事を願っている。

映画「ジュノ」 〜16歳の妊娠出産をポップに描くハートフル・コメディー〜

どうも、更新するする言いながら全然していないたまこしです。最近密かに考えているのは、「新旧問わず、短くても、最低週に1本以上映画レビューを書く」という目標。今日さっき観た作品が良かったので更新します。

 

 

『ジュノ』96分

2007年アメリ

ハートフル・コメディー

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今年観た旧作映画で一番良かったかもしれない。

「16歳の妊娠」という、一見重くなりそうなテーマがポップでコミカルに、だけどちゃんと真面目に描かれているように感じた。

 

 


あらすじ

高校生のジュノは、好奇心から予期せぬ妊娠をしてしまう。産むか産まないか、親にどう伝えるか、立ちはだかる問題を通して少女の成長を描くハートフル・コメディー。

 

 

 

登場人物がみんな凄く良い人たちだった。

 

親友      最初から最後まで一緒に解決法を考え、寄り添ってくれる。

父親      初告白から頭ごなしに怒らず受け入れる。またJKシモンズ(『スパイダーマン旧三部作』の新聞長、『セッション』の鬼教官)が演じてるってのがもの凄く良い。

義母(父親の再婚相手)     妊娠を聞きジュノの覚悟を確認するなり、すぐに母体に健康な食事や医者の予約など前向きに捉えて協力する。

継母    子育てや母親になることへの憧れ、本当に子供が好きだという事が伝わってくる。

 

 

 

「未成年・望まない妊娠」と聞くと、無意識にイメージしてしまう「こういうもの」というのから、いい意味でズレてるのがすごい好き。

妊娠初期から「子供を欲しいけど事情があってできない人に養子として譲る」という選択肢を考え決断する。すぐに受け入れ協力する家族。妊娠後も普通に高校に通い続ける。養子受け入れ夫婦とのがっつりとした交流。赤子の父親とは、セックスした時は「友達」なのに、妊娠出産期間の交流を得て「恋人」になる。

なんだか凄く優しい世界だなあとおもった。

 

『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』レビュー

スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』

 ソース画像を表示

 

 

公開日2019年6月28日(金)

鑑賞日2019年6月30日(日)

バージョン 2D字幕

 

 あの最高にして感動のシリーズ最終章『アベンジャーズ/エンドゲーム』(以下EG)から二カ月。フェイズ3及びインフィニテイーサーガの最後の作品は、エンドゲームかと思いきや今作FFHだと、マーベルスタジオのケビンファイギ社長から公式に発表済み。EGを観る前は「これを観てしまうとアベンジャーズ(MCU)ロスになる」と思っていたけど、何週間か前に公開されたFFH最終予告編(EGネタバレ込み)を観たら、そんなことは無い!確かに一つの時代が終わったけれども、まだまだシリーズの未来に希望を感じた。全然エンドゲームしねーじゃん笑

 

そんな今作FFHも公開からまだ三日しか経っていないのにツイッターでは絶賛の嵐。まあ、その辺は毎度のことだけど、EG並みに(下手するとそれ以上に)ネタバレ無しでは何も語れないようなツイートの多くに、一時間でも早く観に行かなければと土曜の仕事終わりに深夜25時の回を予約(普通の時間はほとんど埋まっていた)。

その後が私の失敗。仕事から帰って支度をして、終電前まで仮眠を取ろうと思ったら、起きたのが午前3時。「終わってるやん!」と1900円を無駄にした事を悔みつつも、とにかく早く観なければと朝8時の回をすぐ予約。そして鑑賞終了後のレビュー作成の現在に至る。

 

 いや本当に面白かった。「スパイダーマン」として「MCU作品」として「ヒーロー映画」として「青春映画」として、最高に面白だった。そして毎度ながら今回も衝撃の展開だった。

 

以下ネタバレあり

(『アベンジャーズ/エンドゲーム』の重大なネタバレも含みます )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚構の存在

今作で何よりも衝撃だったのは、後半のミステリオの正体だろう。予告編及び本編前半ではヒーローとして描かれていたけど、公開前から「本当に味方なのか怪しい」と言われていた。実際の結末としてはヴィランだったわけだけど、その描かれ方は完全に予想外だった。

エレメンタルズという怪物の存在も、別の次元から来たという事も、そもそもべック(ミステリオ)がスーパーヒーロー(超人)だという事も嘘だった。最先端の科学技術で作り上げた(偽物の)ヒーローになる事で世界を支配しようとするというのが面白い。シリーズエンタメ作品としてかなりのクオリティで作られ世界を拡大してきたMCU、この高精度なフィクションの中で作品自らが「これはフィクションです!」と言っているようで、それが逆にリアルだった。

 

 

善人は悪人に利用されやすい

 前作『ホームカミング』では「能力(スーツ)があるだけではヒーローになれない」という事を描かれていたけど、今作で感じたのは「純粋さや良心だけでは、その人が持つ能力を悪人に利用されることがある」ということ。「味方(善人)のフリをした敵に利用される」という展開だけ聞けば良くある話だが、「純粋なだけで社会経験の乏しいピーター」が「社会経験豊富な悪い大人のべック」に騙される事でその要素が際立つ。

 

沢山の情報にあふれる今のネット時代、真偽に問わず感情にダイレクトに流れてくるニュースも多い。この現実社会も大半の人は善良な市民かもしれないが、流れてくる情報や近づいてくる善人(のフリをした人)を何でもそのまま信じていると、賢くて悪い大人にすぐ利用されてしまうかもしれない。エンドクレジットでのスクラル人フューリーの衝撃に次ぐフューリーバカンスがスタジオである点は、まさに観客に対して「お前が観ているのは真実か?騙されていないか?」そう語りかけているように思えた。そういう視点で観ると、今作は政府の嘘を描いた『キャプテンアメリカ/ウィンターソルジャー』の続編のようでもあり、ヴィラン(スクラル人)が実は弱者だった『キャプテンマーベル』の続編でもある。MCUにおけるフューリーの役割って、そういうMCUの中の嘘を暴くことにあるのかもしれない。

 

 

アイアンマン(トニースターク)という存在

MCU版のスパイダーマンを語る上で絶対に欠かせない存在がアイアンマン(トニースターク)だろう。『シビルウォー』で憧れの人という立場からピーターをヒーローに勧誘し、『ホームカミング』では「ヒーローであることの重み」を厳しく説き突き放すも最後には認め、『インフィニティウォー』では正式にアベンジャーズ入りを認めるもサノスへの敗北で死別、『エンドゲーム』では感動の再会を果たすが立場を変えての死別。アイアンマン(トニー)がいたからこそスパイダーマン(ピーター)は存在し得る。そういう意味では今作は(というかMCUの『スパイダーマン』は)、トニースタークが登場してなくとも『アイアンマン』シリーズの続編とも言える。「偉大な師を失った世界をどう歩んでいくか」それが一番の見所だった。

『ホームカミング』であれだけ認めてもらいたがっていた少年は、認められた後を描く今作では、その期待と責任の重さに押しつぶされそうになる。一度はその重責から逃げようとするが、ミステリオという新たなヒーローの師と出会い、決意新たに世界の脅威(エレメンタルズ)に立ち向かう。がしかしそのミステリオこそが真の黒幕であり、その経緯もトニーの過去のから生まれたという点が『アイアンマン』らしい。一度敗北し機内でハッピーと会話するシーンは、シリーズを観てきた人なら涙せずにはいられない。亡き師トニーに認めてもらったにもかかわらず、己の甘さから唯一の形見を悪人の手に渡してしまい、友人と世界を危険にさらしてしまう。ピーターはそこで初めて、他人の期待や受け売りなんかではなく、自らの意思で行動する。そこで流れるロック(曲名がわからない・・・)は、トニーがアイアンマンスーツを開発中にいつも流れていた曲。本来盛り上がりの曲であるはずなのに、エンドゲームでトニーの死を観た直後だからこそ号泣してしまった。

今作がフェーズ3の締めくくりであるというのは、そういう部分が大きいのかもしれない。

 

 

青春モノ

 最後になってしまったけど、今作で忘れちゃいけない大事な要素が「青春モノ」であること。修学旅行を軸にピュアな高校生の恋を描いている。不器用な男子高生ピーターと不器用な女子高生MJの絶妙な塩梅の交流が観ていて楽しい。いろいろ策を練るけど空回る感じや恋敵に勘違いされる感じなんかもおもしろかった。最後のキスも初めてで慣れてないです感がたまらなく良い。ハッピー&メイ伯母さんやネッド&ベティの関係も観ていて楽しかった。

 

まとめ

  最近のマーベル事情(MCUに関わらず)で、三月に『スパイダーマン/スパイダーバース』があったこと、『エンドゲーム』で時間軸の分岐(別次元の存在)が描かれたこと、X-MENのMCU統合が正式に決まったこともあり、そんな中での今作予告編では別次元の存在を語っていた。だから今回私は、トビーマグアイア&アンドリューガーフィールドの登場がサプライズであると、ひそかに考えていた。今回は残念ながら叶わなかったけど、トムホランドもアンドリューもそれには肯定的なコメントをしていたし、ファイギ社長も可能性の否定はしていない。このMCUブームがそのまま上り調子で続いてくれれば、いずれフェイズ4~5で、その夢も実現してくれるのではないか。そう願っている。

 

 

人生初の応援上映に行ってきた感想


もうすぐ公開1ヶ月の「アベンジャーズ/エンドゲーム」。歴代興収1位目前ですが、今日僕にとっても歴代劇場鑑賞回数1位となった。

5回目の今回、人生初の「応援上映」という奴に行ってきた。「応援上映」とは、本来劇場マナーとして禁止されている声出しがOKというやつだ。推しキャラへの声援、笑い、いい意味でのヤジ、最高のシーンでの拍手、これらのことを会場のみんなで一緒にやって盛り上がりましょう、ていう楽しみ方。行くかどうかギリギリまで迷っていたけれど、おそらく最寄り劇場で最後の回が、今朝まだ席が埋まってなかったから思い切って予約した。

 


まず今回応援上映に行ってきた理由は、噂に聴いていた上映前のMCUオリジナル注意喚起が観たかったから。

また「応援上映」について、良い噂も悪い噂もいろいろ聴いていて、エンドゲームという絶好の機会に一度経験しとくのもアリだと思ったから。

そして、これは「応援上映」とは直接関係無いけど、公開から1ヶ月近く経っても、ずっとMCUの事ばかり頭から離れない。他にも優れた作品や追っているシリーズなど、MCU以外で観たいはずの映画やドラマが全然手につかなくて困っていた。だから、しばらく熱を冷ますというか…ファーフロムホーム公開までMCU離れする為の最後の鑑賞くらいの気持ちで、期間限定の応援上映は丁度いいなと思ったから。

今回僕にとっての「応援上映」の感覚は、「キャラクターを会場のみんなで応援する」というよりは、「歴代興収1位間近の今作の後押しをする」という感覚に近かった(何十億ドルのうちの1800円なので、微々たる金額ではあるけど…)。

 


まず僕が観た今回の応援上映は概ねルールは守られていたと思う。(隣の人が予告中ずっと携帯いじってたけど、本編前にやめたからギリギリ許してやる)

が、率直な感想として、普通に観た方が良かった。もちろん応援上映ならではの良かった事もあるし、個人の好みの問題ではあると思うけど。自分には向いていないか、エンドゲームが応援上映向きじゃないか、その両方か。

 

 

 

以下、理由の詳細を書くけど、本編のネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良かった点

会場を見渡すと、コスプレやグッズを持った人がチラホラいた。ナターシャの髪色髪型の女の子、スパイダーマンのフードを被った男性、光るキャップの盾を持った人、あとはオタ芸の光る棒(正式名称がわからない)を持った人が数名。「(この空間には、自分と同じくマーベル大好き野郎しか集まってないんだ…)」そう思うと、なんだかいつも以上にワクワクした。

 


開始前のMCUオリジナル注意喚起は、噂通りとても良いものだった。過去アベンジャーズ3作に限らず、全MCU作品から映像を使われていたのが良かった。全部は覚えてないけど、記憶に残ってるのは以下のモノ

「推しのキャラクターが出ても、撮影はご遠慮ください」(IM3記者前でマンダリンに宣戦布告して携帯投げつけるシーン)

「暴れたり、踊ったり、その様な行為は、アベンジャーズにお任せください」(ハルク、韓国オコエ、ロナン前でのクイルとか)

「もし守れない人は、塵になって消えてしまうかも…」

「以上の事を守って楽しんでください。一歩劇場に入れば…君もアベンジャーズだ!」

 


さて本編では、ポイントポイントで拍手が巻き起こるのは好印象だった。まずバートンの娘ちゃんが的を射た所。そしてキャロル初登場と地球帰還シーン「ありがと〜う!」。

バナー初登場、「グリーン!」「撮ってあげて〜!」

キャップとトニーの和解シーン。握手の所で会場も拍手(僕も拍手👏)

トニー、ハワードとのハグで拍手👏、当然ピーターとのハグでも拍手👏

2012で拍手👏、2013アスガルドで拍手👏、キャップのムジョルニアで拍手👏、ワカンダ組登場で拍手👏、サム登場ストレンジ登場クイル登場ピーターパーカー登場ヴァルキリー登場ペッパー登場ジャイアントマン登場でひたすら拍手拍手拍手👏👏👏

ティチャラ「イボンベ!」会場「イボンベ!」ティチャラ「イボンベ!」会場「イボンベ!」

そしてアッセンブル…とこの辺からは正直劇中に気持ちが入って会場がどうだったかあまり覚えていない笑。

そしてエンドロールでも当然、キャスト紹介はずっと拍手されていた。

 

 

 

 

 

 

悪かった点

今回応援上映で嫌だなぁと感じた最大の要因は、泣くポイントを濁されたこと。

特にモヤッとしたのは、ソー関連のシーン。

バナーとロケットがソーを迎えに行く場面、確かに初見時は笑ったけど、2回目以降だとアレは笑いではなく苦しいシーンという風に捉えてしまう。だから会場が笑ってヤジ飛ばすのが「どうしてそんなビドイことを?」って思ってしまう。初見ならともかく、応援上映に来るような人は何度目かの鑑賞でしょ?と…

開始数十秒では、会場から「マスタードお願いしまーす」「僕はケチャップで〜」なんて聞こえてきたけど、これから家族を失うバートンの事を思うと複雑な気持ちになってしまった。

あと、農園(ガーデン)でのサノス帰宅で階段登るシーン。「足元気をつけて〜」って声援…。えっ?アベンジャーズ応援に来てるんだよね?何でサノスのクソ野郎に気を使ってんの??って思った。

 

 

 

 


僕の中にまだ「声出し」に対する恥ずかしさがあった事、行くメンバーや作品が違えば印象も変わったかもしれない。正直「アベンジャーズ/エンドゲーム」は、応援上映向きではないと感じた。はっきり向いてると思うのはビック3vsサノスとアッセンブルだけで、大半は涙の展開なので騒ぐには複雑。笑い色の強いアントマンやGOTGくらいなら向いてのかな?

 


そんな感じでした。